ワインラインアップ
ソラリス ル・シエル
まだ収穫日の決定なども試行錯誤で、永年この畑を見てきた経験と感性を頼りに行っている段階ですが、今まで発売したどのヴィンテージにも違う表情(ヴィンテージ由来)と共通のニュアンス(土地由来)がありテイスティングする際はいつも楽しませてくれています。
ソラリス ル・シエルは、是非、ヴィンテージごとの違いも楽しんでいただきたいワインです。
また、熟成による発展性も未知数ではありますが楽しみなワインですので、これから長い目で見守っていただければ幸いです。
新たに混醸にチャレンジしたのは、個々のぶどう品種ではなくその土地・区画でのタイミングで収穫し、より長い時間共に育てることでアッサンブラージュ以上の複雑さ、そしてハーモニーが生まれ、小諸の土地のテロワールを表現できる可能性があるのではと考えたからです。
現代の一般的なブレンドワインの多くは、「アッサンブラージュ」という方法で、品種ごとに栽培、醸造してワインになった状態でブレンドします。一方で「混醸」は、複数品種のぶどうを一緒に搾って発酵させる醸造法です。ル・シエルのワイン造りは、同じエリアの同じ日に収穫したぶどうを混醸する「フィールドブレンド」と呼ばれるもので、近年世界的にも再認識されています。より畑の特徴を引き出すアプローチの一つと考えています。
今回、「お客様が喜ぶテロワールの表現されたおいしいワイン造り」を模索する中で、小諸にシャルドネ、信濃リースリング、ソーヴィニヨン・ブランの3品種が良く出来る土地を見つけることができました。
また、数十年に及ぶ栽培・醸造の経験から、それぞれの品種の特徴をつかんでもいます。品種の割合は、最終的なワインの個性に影響を与えますので、その畑のぶどうの個性を深く理解していることも重要なポイントです。
「混醸」に取り組む下地が十分に整い、「小諸」という土地の新たな可能性をひき出すことにチャレンジできたのです。
アッサンブラージュはそれぞれの品種にあったタイミングで収穫し、出来上がったワインを好ましいと思うバランスに調整できるため、造り手のイメージしたワインに組み立てることが出来ます。反面、人の及ぼす影響は大きくなります。
混醸は畑全体のタイミングを見て収穫するため、そこですべてのバランスが決まります。そのため、よりその土地、品種への理解が必要になり、出来上がったワインにはよりテロワールが表現されると考えています。
標高670~680mに位置したゆるやかな南向き斜面で、土壌は埴壌土(粘土がかなり多いが少し砂も含まれる)です。ぶどうは「ル・シエル」に使用した3品種の他に、メルローも植えられています。
ワイン名「ル・シエル」はフランス語に由来する「空」「天」を意味する言葉で、畑のある「天神」とよばれる地名(小諸市諸字天神、及び小諸市西原字天神前にまたがる)から命名しました。
畑のそれぞれの品種の熟度の違い(糖・酸のバランス、香り成分の熟度など)を見極めて収穫のタイミングを決めます。この3品種の熟度を見極めることは非常に難しく、長年の経験と日々の観察力が必要とされ、栽培管理の技術があってこそできるワインだと考えています。
発酵・熟成には450Lの大きめの樽(古樽)とステンレスタンクを併用し、樽の影響をおだやかにしています。
全体として過度な装飾をしないぶどうの個性を生かした醸造を心がけています。
6月に入りまもなく梅雨入りしましたが雨は少なく、6月27日に異例の早さで梅雨明けが宣言されました。1週間ほど猛暑が続きましたが、それ以降は雨や曇りの日が続き、後日、梅雨明け日は7月23日と大幅に修正されました。夏場も日中の雨は少ないものの、夜間の降雨が多く、新梢や雑草の伸びが強い年となった。
10月中旬以降は天候が回復し、終盤まで涼しく晴れた日が続きました。全体的に酸の低下は緩やか、糖度は収穫後半ほど好天の影響を受けて高い傾向がありました。健全で糖度は十分、酸度はやや高めで、バランス、香りも良い申し分のないぶどうが収穫できました。
白桃、洋梨、グレープフルーツなどのフレッシュな果実に白い花束、セージやミントなどの清涼感のある香りなどが幾重にも重なっています。
アタックにはボリューム感のある生き生きとした果実味が口いっぱいに広がります。その後綺麗な酸味が現れハーバルな印象とともに奥行きも感じられます。
「酵母の泡」とは
「酵母の泡」とは
世界に誇る日本固有のぶどうを楽しむ泡
“酵母にしか生み出せないきめ細やかな泡立ち”
“品種特性のフレッシュさを活かす製法”
“ぶどうの個性を最大限に引き出す取組み”
この3つのこだわりを詰め込んだ
日本の食卓に寄り添う
本格的なスパークリングワインです。
密閉した耐圧タンク内でベースとなるワインに酵母と糖分を加え、二次発酵の際に出る炭酸ガスをそのままワインに溶け込ませるスパークリングワインの製法です。
炭酸ガス注入ではできないきめ細かい繊細な泡を生み、重厚感の出るびん内二次発酵に対して、
フレッシュな果実本来のアロマを楽しむスタイルのワインになります。
製法 |
泡の生み出し方 |
特徴 |
炭酸ガス |
ベースワインに炭酸ガスを注入。 |
手間、時間がかからないため安価。泡は粗めで持続時間が短い。 |
トラディショナル(びん内二次発酵)方式 |
びん内でベースワインを二次発酵する際に発生したガスをワイン内に溶け込ませる。 |
上質な泡、長い熟成期間によるイースト香等での複雑さが特徴。手間がかかるため高価。 |
シャルマ(タンク内二次発酵)方式 |
タンク内でベースワインを二次発酵する際に発生したガスをワイン内に溶け込ませる。 |
きめ細やかな泡と、空気に触れないため、ぶどう由来のアロマやフレッシュさを楽しめる。 |
2008年の発売以来、多くのお客様にお楽しみいただいている「酵母の泡」。
実はこのワインの開発は、現・ソラリスシリーズの醸造責任者 西畑徹平が担当しました。
当時の模様について西畑に振り返ってもらいました。
私は、学生時代に偶然ソラリスに出会って「ソラリスを造りたい」と想い、マンズワインを志望し縁があって入社しました。入社当初はもちろんソラリスの担当ではありませんでした。入社3年目で開発課に異動して、それでもまだワインではなくリキュール等を担当していたある時、サンプル製造にちょうどよい小型の耐圧タンクを見つけて研究開発部長に「空けていいですか?」と訊いたらすぐにOKをもらったので早速開けてみました。
中に何が入っているかは聞いていなかったのですが、開けてみるとぶどうから造られたスパークリングワインが入っていました。研究開発部長が二次発酵スパークリングワインの試験をやっていたタンクだったんです。テイスティングしてみると泡の質がとても心地よく感じられました。「二次発酵だと泡の質が全然違うんですね」と部長と話していたら「製品化に向けてチャレンジしてみる?」という話をもらい、当時はずっとワイン造りに関わりたいと思っていたので「やります!」と即答しました。
当時はマンズワインのスパークリングワインもほぼすべてが炭酸ガス注入方式でした。
びん内二次発酵も試験的に造り始めてはいましたが、製品化には至っていなかったように思います。
しかし、当時世界的にスパークリングワインの需要が伸びてきていたので個人的には今後、日本でも本格的なスパークリングワインの可能性があると思っていました。
それからは二次発酵ワインの造り方を詳しく調べたり、使用する原酒の調整や二次発酵の管理方法、二次発酵後の清澄化方法などを部長にいろいろ教えてもらいながら検討を続けました。特に難しかったのは仕上げろ過、びん詰工程でした。炭酸ガス注入方式のスパークリングの場合は、澱を取り除いてクリアにしたものにガスを添加するので簡単なんですが、発酵して濁っている状態のものを炭酸ガスの圧力を保ったままきれいにするのは専用の機械もありませんでしたしとても悩みました。最終的にはワインに与える時間と現場の方達の培ってきた経験値がポイントになりましたが、結果的にはクリアできめの細かな泡のスパークリングワインとしてびん詰することができ、本当に安堵、感動しました。
そして2008年に「酵母の泡」としてラベルを貼って製品になった時は感動しました。その後、念願の小諸ワイナリーでソラリスの醸造を島崎さんの下で3シーズン経験した後、渡仏しました。約3年半の派遣留学を終え2016年に帰国した時には酵母の泡がマンズワインの中でも主要な製品に成長していて、また社内外で「酵母の泡」についていろいろ話を聞くことがあり、素直にすごくうれしかったです。 今、念願であったソラリスのワイン造りに携われているのはまさにあの勝沼での時間のおかげだと思っています。
西畑徹平(にしはた てっぺい)
マンズワイン株式会社 小諸ワイナリー 製造グループ長・醸造責任者。
2005年マンズワイン株式会社入社。
山梨大学大学院在学中、国産ワインコンクールの公開テイスティングでソラリスと出会い「ソラリスが造りたい」とマンズワインを志望。
2008年「酵母の泡」の開発に携わる。
その後、小諸ワイナリーで島崎の元でソラリスの醸造に3年間携わる。
2013年よりフランスに留学、ブルゴーニュ・ボーヌの醸造学校CFPPAでブドウ栽培者国家資格、ボルドー大学ブドウ・ワイン科学研究所でワイン醸造士国家資格を取得。
留学中はブルゴーニュのフレデリック・マニャン、ボルドーのシャトー・ラ・ラギューヌで研修。
帰国後2018年から島崎大よりソラリスの醸造責任者を引きつぐ。
2021年に小諸ワイナリー製造グループ長就任。